改正入管法で注目される育成就労とは?

2024.6.15
昨日、改正出入国管理法が参議院本会議で可決・成立しました。
外国人労働者の現在の技能実習制度にかわり、新たに育成就労制度を設けるというのが大きな趣旨です。
出入国在留管理庁が公表している改正入管法の基本的な考え方は、以下の通りです。
① 保護すべき者を確実に保護する。
② その上で、在留が認められない外国人は、速やかに退去させる。
③ 退去までの間も、不必要な収容はせず、収容する場合には適正な処遇を実施する。
→これらの基本的な考え方に基づき、様々な施策をパッケージとして講じることにより、現行法の課題の一体的解決を図ることを目的とする。
賛否両論あるのを承知の上で、本日は上記①に焦点を当ててお話ししたいと思います。
従来の外国人技能実習制度は、その目的を「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力すること」としています(厚労省HPより)。
つまり人手不足解消のための人材確保が目的ではなく、途上国に技術や知識を共有する国際貢献であり、外国人はあくまでも「実習生」として就労します。知識を学びに来ているという前提条件があるため、日本人と同等以上の賃金は必要なく、実際には低賃金で過酷な労働を強いられたり等企業に良いように使われてしまうという実態がありました。技能実習は基本的に転職が認められていないため、技能実習生は残念ながら精神を病んでしまったり失踪して行方が分からなくなったりという事が社会問題化していました。
そこで、新しい育成就労制度はその目的を「人材の育成と確保」と掲げ、外国人は実習生としてではなく労働力として就労し、ある一定の要件の元転職も可能になります。これはとても大きく、日本企業にとっても優秀な人材を自社に留めるために賃金や待遇面で努力が必要になりますし、外国人労働者の能力も向上していくと考えられます。在留期間は原則3年ですが、「特定技能1号(最長5年在留可)」への移行も視野に入れられています。更に技能検定や日本語能力検定など高い水準をクリアし「特定技能2号」に移行できれば、在留期間の更新に上限がなくなり永住者への変更も視野に入ります。
上記の点を踏まえると、本当に日本で就労したい、母国を離れてでも日本で技術を学び社会貢献したいと考える外国人の地位を保護することに繋がる事が期待されます。